さざなみプロダクション

さざなみプロダクションの平社員による日記

バラペルディーダのこと

私が創ったアイドルと彼らを取り巻く世界について、出来上がった経緯を残しておこうと思う。

 

Twitterである日突然生まれた男の子のイラストから始まった創作は長々と続き、どんどん設定が追加され、ひとつの物語になった。いまからTwitterログを追うのは難しいだろうし、「なんの話してんのかなこの人……急におかしくなったのかな……」って不安になってる人もいるだろうから、一回説明させてください。

長いよ。

 

数年前に書いた物語の中に、舞台に立つ男性がいた。

彼はステージを愛していて、舞台に立つことをなによりも大切にし、物語が完結する瞬間までステージのことを思っていた。それ自体が物語の本筋ではなかったけれど、私は彼の「舞台を愛する」姿勢をとても愛していた。

その物語を結んでからしばらく経ち、書き上げた私の疲労もだいぶ癒されたとき、「ステージを描きたい」と思うようになった。

あの話の中で少し触れた「舞台」について、私の思うところを、本筋として描いてみたいと思った。

 

で、「アイドルの話が描きたいなあ」と呟き、シャープペンシルで一人の男の子を描いた。

なお、当時の私はアイドルというものを(実在のアイドルどころかアニメ・漫画・ゲームのアイドルすら)一人も知らなかったので、なにからなにまで妄想である。

髪型はアシンメトリーにしよう、そのほうがアイドルっぽいから。駆け出しのアイドルだろうし、顔はとびきりの美形ではないほうがいいな、歌も上手すぎない方がいい。きっと優しい子だろうから、おばあちゃんっ子だったりするだろうな。

そんな設定を適当につけて、顔をしかめて必死に歌っている男の子を描いた。名前も適当に「唯くん」とつけた。いや、適当と言ったけれど本当は、「ただの男の子」という意味でつけた。ただの男の子。アイドルになりたい、ステージの上ならアイドルになれる、みんなを夢中にさせる、ただの男の子。

だんだんと唯くんは私のなかで形を持ち始め、「ゆいくん」では収まらなくなってきた。この子を表す名前が必要だ。でももう、この子を「唯」以外の文字で表すことはできない。とてもじゃないけど私には、「ゆい」を消すことはできなかった。

だから名づけ辞典のサイトを眺めた。「唯」が含まれる、きれいで、この子を表す名前。どれもあんまりピンとこないなあと思っていると、女の子の名前のページに「唯純」という文字を見た。

いずみ。

何回か紙に書いた。あと口に出して読んでみた。

ただの、まじりけのない、男の子。

いいじゃん!

で、唯純になった。いずみは、ファンには唯くんって呼ばれるかもしれないな。なんて思って満足した。

 

唯純はきっとステージを愛するだろうし、ステージに愛されるだろう。ただの男の子なのに、愛される才能がある。

じゃあきっと、この子に憧れる子が必要だ。

「その子」はとびきりの美形だろう。きっと誰もが振り返るくらいかっこいい。歌も上手いはずだ。それでも、その子にはないものが、唯純にだけある。唯純は彼のことが大好きだし、彼を尊敬している。それでも、彼はどうしようもなく唯純に憧れてしまうのだろう。そんなストーリーをぼんやりと思い描いた。

 

そしたら、「その子」を作ってみよう。

私の創作はいつだってこんなふうに動き始める。

唯くんがただの男の子なのだから、その子は「稀」なほうがいい。まれ。めったにないくらい綺麗でかっこいい、特別な男の子がいい。

唯純は茶髪だから、黒髪にした。髪型は唯純と逆の分け目にした。目は唯純よりも少しキリっとさせて、身長は唯純より低くした。きっと真面目で、自分を追い込むタイプだ。ステージに立ったら誰よりも理想のアイドルになろうとする、真剣な男の子だろう。

名前は「真稀」にしようかな。唯純みたいに、ぱっと見で女の子に見えちゃうくらい綺麗な名前がいい。読みはマサキ。まきちゃん、と呼ぶ唯純の声が聞こえた気がしたから。

まあ結局、個人的な理由でマサキはやめた。

「真」のほかに「純」と対になる綺麗な文字はなんだろう。

瑞々しくて、美しい稀有な男の子。

あ、瑞稀にしよう。

すぐに決まった。

私のなかで唯純は彼をみっくん、と呼んだ。

本当にネーミングセンスがないな、唯純は。

 

このふたりは並べると本当にバランスがいい。当然だ、並べるために作ったのだから。でも、なんとなくだけど、このふたりはふたりきりのユニットではない気がした。五人組のアイドルユニットの、特に人気が出たふたりの、派生ユニット。そんな気がする。

 

さて忙しくなってきたぞ。あと三人作らなくては。

 

次に生まれたのは「慧斗」。

ケイトというキャラクターはすぐに生まれた。見た目は完全に私が手癖で描いた、私好みの顔だ。あと、高校生のときに「慧ちゃん」という女の子がいて、私はその子の名前がすごく好きだった。どこか「彗星」に似ているかっこいい名前だなと思っていた。本人も名前の漢字を「彗星に、心」って説明していたと思う。

慧が入ってて、かっこいい名前、じゃあ慧斗。即決。唯純は彼をうれしそうに慧ちゃんと呼んだ。わかる、私もそう呼びたい。

慧斗は穏やかな顔をして、唯純とは違って無口で、きっとギャップがある。ダンスが得意なんだろうな。たぶん瑞稀と違って「どうしてもアイドルになりたかった」わけじゃない。誰かになってくれと言われてなってしまったのだろう。大人っぽい見た目によらず流されやすくて、子供なところがある。ちょっとかわいそうかもしれない。

 

次に、名前が思い浮かんだ。

きらきらしている名前がいい。だってアイドルだから。きらきらしているもの……ダイヤってどうだろう。大也。いいじゃん!

大也は名前が気に入りすぎて、顔と性格がなかなか決まらなかった。数日間ずっと大也のことを考えていた。きらきらした最高の名前に負けないくらいのアイドルがいい。え、アイドルってなんだっけ?

考え疲れてノートに落書きしたショートカットの男の子に、なんとなく眼鏡をかけた。

うわ!かわいい!!!!

だからその子に大也という名前を付けた。

眼鏡をかけて賢そうな顔をした、小柄で、底抜けに明るいスーパーポジティブな男の子。ああ、大也だ。かわいい。多分最年長だろう。初夏の生まれだ。

 

最後に、もうとびっきりきらきらした名前にしようと思った。じゃあ星がいい。もう読み方なんて当て字だってかまわない。ダイヤと並んでも負けないくらいの、きらきらした名前。

星空!

せいらくん。

名前ができた瞬間にルックスが浮かんだ。金髪碧眼の、嘘みたいに綺麗な男の子。ツリ目にするかタレ目にするかはちょっと迷って、ミズキと対照的にしたかったので、タレ目にした。ただのカワイイ男の子にしたくないから、しっかりものにしよう。きっと完璧に夢みたいな王子様だ。だれよりも「アイドル」に憧れる、アイドル。

 

で、五人揃った。

ひとり残らずかわいい、私のアイドル。

ユニットの名前は"Bala PerDida"(バラペルディーダ)、意味はスペイン語で「流れ弾」であります。なんでこの名前にしたかというと、私が大学生のときに組んでいたバンド名です。安直でお恥ずかしい。サークルの仲間には「バラペル」と呼ばれていました。

 

唯純と瑞稀のユニットは、「LEÓN Celeste」とつけた。レオンセレステ。由来は物語の中で語ったのでここでは言わない。スペイン語の辞書をぺらぺらとめくり、唯純と瑞稀が名づけるように、私が名づけた。唯純は「すごい!」と言った。

 

こうしてアイドルグループ「Bala PerDida」の物語が動き始めた。

お互いに憧れを抱き、思いやりつつも、ステージに立とうと努力する。私の思う「ステージ」を、この子たちで描きたい!と思った。

というわけで今の私はこの五人のことで頭がいっぱいなのです。

許して。