さざなみプロダクション

さざなみプロダクションの平社員による日記

「黒鉄の魚影」

名探偵コナン「黒鉄の魚影(サブマリン)」を観た。

ご存じのとおり映画が苦手人間の私、子どもの頃にコナンは結構好きで見ていたが最近ほとんど追っておらず、今回は主題歌に背中を押されて映画館へ行った。

そう、主題歌である。

私は20年近くスピッツのファンとして生きており、朝ドラの主題歌になったときも「うんうん」と思っていたが、今回コナンの主題歌に決まったときはさすがに相当びっくりした。え、コナンの主題歌ってB'zとZARDじゃないの!?(年齢がバレる)

 

名探偵コナン」の知識

前述のとおり私はB'zがよく主題歌を務めている時代に小学生くらいの年齢で、コナンのアニメはVHS(!!!)をレンタルしてきてはよく見ていた。当時は今ほどキャラクターも多くなく、服部とかキッドとかそのへんのキャラクターが活躍していた記憶がある。

だんだん成長してアニメを離れ、黒の組織に美男美女がたくさん増え、私はあまりコナンのことがよくわからん大人になっていた。どうやら安室さんというすごい男前がいるらしいというくらいの知識しかなかった。

で!

今回の主題歌である。これはさすがに観にいこうかなと思っているうちに友達が鑑賞し、とりあえず信用できる大人はこの人とこの人、という知識(やっぱ安室さんはいい人らしい)だけを与えられ「まあとりあえず大丈夫だから観にいけ」と言われてさっさとチケットを取った。

コナンを映画館で観るのはおそらく『ベイカー街の亡霊』以来だ。

 

なんかすごい泣いた

なんかすごい泣いた。

この辺から映画の内容に触れるのでネタバレを気にされる方はご注意ください。

と言っても、この映画で「誰が犯人か!?」っていうことは私にとってそんなに重要ではなかったのだが。

 

いきます。

 

灰原哀さん。

私が小学生のころ、灰原哀は大人だった。

少年探偵団の子どもたちがまだ見たことのない世界の汚さを知っている、諦めた大人のお姉さんだった。そんな冷淡にすら思える態度と、あどけない見た目と、少年たちへの言葉に見え隠れするやさしさのいわゆる「クーデレ」みたいなところが魅力なんだろうとも思っていた。

そんな私、大人になってはじめて灰原哀ちゃんとまっすぐ向き合ってみて、彼女がひとりの女の子であることをしっかり実感してしまい、序盤からずっとうっすら涙目。

かわいすぎるけなげすぎるいじらしすぎる。

だって実年齢18歳だってよ。

全然大人じゃないじゃん。

見た目は子供、頭脳は大人』なんて、もともとそうじゃん。

この作品の面白いところである、小学生の見た目になったけど賢い!っていうポイントより、そもそも身体が縮まなくたって工藤新一も宮野志保もまだ17歳とか18歳の「子ども」なのに、っていう気持ちになった。

もともと『頭脳は大人』は『賢さ』という意味なのだろう。

工藤新一は、まあそうだろう。そういうキャラクターだ。スポーツもできてかっこいいし賢いけど性格は結構悪ガキで、年相応に幼馴染にちょっかいをかける描写があったように記憶している。

野志保は、当然賢くもあるだろうけれど、同時に『大人のような諦観がある』と思った。まだ18歳なのになあ。

だから私は哀ちゃんが攫われるシーン、コナンや蘭や博士が必死に追いかける顔を見てなんか泣いた。そうだよ守ってやってくれよみんなでさあ……。この顔、哀ちゃんに見せてあげたいと思ったよ。私がそうだからわかるんだけど、自分が周りにどんなに大切にされてるかって、わかってるつもりで「ありがとう」なんて言いながら、本心のところで気づいてないんだよね。

 

灰原哀さん。

少女の不安と大人の諦観が入り混じった18歳の女性だった。

クライマックスでコナンを追って海中まで必死に助けにきてくれるところ、母性に近い大人っぽさを感じたし、でも(救護のためであっても)口づけたことを彼の「恋人」に対して「返そう」としてしまうところに少女らしさを感じてもう居ても立ってもいられなかったよ。

いじらしすぎるだろ。

ここに信頼がある。

家族より公でなく、恋人よりも触れ合わない、そのどれよりも命に近い、秘密を守りあう信頼関係があった。

 

スピッツ「美しい鰭」

ずっとべそべそしていた私、なんとラストシーンを見るころには主題歌がスピッツであることを忘れていた。ふざけるな。

90分くらいかけてすっかり灰原哀ちゃんに感情移入している私の耳に聴こえてくる『美しい鰭』のイントロ。私はこの曲がリリースされてから今日までに103回再生しており(本日時点のApple Musicくんの自己申告であるが気分的には倍くらい聴いてる)、この私がこの曲のイントロを聴き逃すわけなどないのだ。

イントロ三音ですべてを思い出した。

もはや暗記している歌詞を一瞬で全部思い出した。

歌い始める前に大号泣。歌い始めて号泣。サビでさらに号泣。

隣の席の女の子がチラッと私を見た。ごめんね。

この曲すごくないですか?

灰原哀のこと好きな人が書いたでしょ。

これは公開された当初からあまりの出来の良さに「草野マサムネ灰原哀のファンだろ」と冗談交じりに噂されていたのだが、本当にそうかもしれないと思ってしまった。いや、たとえファンじゃなかったとしても、少なくとも彼があの作品で一番感情移入するのは哀ちゃんだろう。なぜなら私がそうだからだ。

スピッツ聴くやつは哀ちゃんの気持ちが刺さってしまうんだよ。(オタク特有のデカ主語)

 

かつて蘭のことを『人気者のイルカ』、自分を『暗い海から逃げてきた意地悪なサメ』と例えた灰原哀。だからとうてい敵わないのだと言う18歳の女の子。

このセリフはあまりに有名で、私ですらうっすら知っていた。

そこへきてこの『美しい鰭』という主題歌はあまりにも、あまりにもである。

美しい鰭。

さみしさと痛みと夜を耐え忍び、大きなものに抗って、いままさに海に泳ぎ出そうとする力強い鰭を「美しい」のだという。

 

暗い海から星が光る空へ浮上していくラストシーンは美しかったですね。

恋愛に拠らない愛情の交換があった。

「秘密守ってくれてありがとうね」であった。

 

強がるポーズは そういつまでも

続けられない わかってるけれど

優しくなった世界をまだ 描いていきたいから

 

おまけ

ところで黒の組織のひとたち、うっかりさんじゃないですか?

私は久しぶりに見たんですけどウォッカってこんなにうっかり八兵衛だったっけ?ジンもだけど、ちょっとかわいいなとすら思ってしまいましたわ。